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長崎地方裁判所 昭和53年(行ウ)3号 判決 1983年2月18日

原告 有限会社東洋商事

被告 長崎税務署長

代理人 有本恒夫 古田泰巳 山下碩樹 本山知 中島耕一 ほか四名

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

1  被告が、原告に対し、昭和五一年七月二三日付でなした

(一) 原告の昭和四七年六月一日から昭和四八年五月三一日までの事業年度分の法人税についての別紙目録(一)の、

(二) 原告の昭和四八年六月一日から昭和四九年五月三一日までの事業年度分の法人税についての別紙目録(二)の

各法人税額等の更正及び加算税賦課決定処分を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  被告

主文同旨。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は宅地建物取引業を営む会社であるが、被告に対し、昭和四七年六月一日から昭和四八年五月三一日までの事業年度分(以下「四八年五月期」という。)及び昭和四八年六月一日から昭和四九年五月三一日までの事業年度分(以下「四九年五月期」という。)に対する法人税について別表一の(一)欄のとおりに確定申告し、その後同(二)欄のとおり修正申告したところ、被告は昭和五一年七月二三日、これらをそれぞれ同表(三)欄の金額に更正する処分及び昭和四八年五月期について過少申告加算税を六五万三一〇〇円とする賦課税決定処分(以下それぞれ「本件更正処分」、「本件賦課決定処分」といい、両処分をまとめて「本件処分」という。)を行い、そのころこれを原告に通知した。

2  原告は、本件処分を不服として昭和五一年九月二四日被告に対し異議申立をなしたが棄却する旨の決定がなされたので、原告は更に右決定を不服として、昭和五二年一月二〇日国税不服審判所長に対し審査請求をなしたが、右所長は昭和五三年三月二七日これを棄却する旨の裁決をなし、原告は同年四月二七日その裁決のあつたことを知つた。

3  原告には本件更正処分を受けるような申告の誤りはないから、右更正処分は被告の事実の認定及び法律の適用を誤つた行政処分であり、本件賦課決定処分は過少申告の事実がないのに過少申告したとの誤つた事実の認定及び法律の適用に基づくものであり、いずれも違法な行政処分である。

4  よつて、原告は被告に対し、本件処分の各取り消しを求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因1及び同2の各事実は認め、同3の主張は争う。

三  被告の主張

1  四八年五月期分処分の経緯について

(一) 原告の同期の法人税確定申告、更正処分及び過少申告加算税賦課決定(異議決定・裁決は同額)の内訳は次表のとおりである(△はマイナスを意味する。)。

番号

科目

(イ)申告額円

(ロ)更正額円

(ハ)増減差額

((ロ)-(イ))円

備考

売上高

<1>

土地売上高

九三、七七二、二〇〇

一五九、一二三、三〇〇

六五、三五一、一〇〇

所得加算

<2>

受取手数料

七、七六〇、三二四

同上

<3>

一〇一、五三二、五二四

一六六、八八三、六二四

六五、三五一、一〇〇

売上原価

<4>

期首商品棚卸高

六四、八九七、一三〇

同上

<5>

当期商品仕入高

二〇四、〇九二、四三七

二〇〇、八四二、四三七

△三、二五〇、〇〇〇

所得加算

<6>

期末商品棚卸高

二一五、四二四、一八八

一八〇、四二三、六三五

△三五、〇〇〇、五五三

所得減算

<7>

五三、五六五、三七九

八五、三一五、九三二

三一、七五〇、五五三

<4>+<5>-<6>

<8>

売上総利益

四七、九六七、一四五

八一、五六七、六九二

三三、六〇〇、五四七

<3>-<7>

販売費及一般管理費

<9>

役員報酬

五、一六〇、〇〇〇

同上

<10>

給料・手当

八〇九、三〇〇

同上

<11>

福利厚生費

一一五、一九〇

同上

<12>

接待交際費

一、一一一、〇四四

同上

<13>

旅費交通費

四三二、七六一

同上

<14>

消耗品費

四〇、七八〇

同上

<15>

事務用品費

五〇、三二五

同上

<16>

保険料

七九一、五八二

同上

<17>

修繕費

四六、二一五

同上

<18>

通信費

二七六、四八八

同上

<19>

水道光熱費

七〇、七六三

同上

<20>

広告宣伝費

二七三、一〇〇

同上

<21>

諸会費

一一五、四〇〇

同上

<22>

印刷費

三五、八〇〇

同上

<23>

支払手数料

九、二七四、〇〇〇

同上

<24>

雑費

一、一六八、七一二

同上

<25>

地代家賃

五六五、〇〇〇

同上

<26>

公租公課

五八三、八三六

六三八、三七七

五四、五四一

所得減算

<27>

二〇、九二〇、二九六

二〇、九七四、八三七

五四、五四一

<28>

営業利益

二七、〇四六、八四九

六〇、五九二、八五五

三三、五四六、〇〇六

<8>-<27>

営業外収益

<29>

代理店手数料

一三一、七六五

同上

<30>

雑収入

三〇二、五八一

同上

<31>

受取利息

一二八、五五三

同上

<32>

五六二、八九九

同上

<33>

支払利息

六、九一二、〇四四

同上

<34>

雑損

一三〇、〇〇〇

同上

<35>

七、〇四二、〇四四

同上

<36>

経常利益

二〇、五六七、七〇四

五四、一一三、七一〇

三三、五四六、〇〇六

<28>+<32>+<35>

特別利益

<37>

固定資産売却益

五六、八七八

同上

<38>

所得金額

二〇、六二四、五八二

五四、一七〇、五八八

三三、五四六、〇〇六

<36>+<37>

<39>

法人税額

七、七六〇、四〇〇

二〇、八二二、九〇〇

一三、〇六二、五〇〇

<40>

過少申告加算税額

六五三、一〇〇

六五三、一〇〇

ところで、右表のうち番号<6><7><8><28><36><38>の各欄の数値には、左記のとおり各五円の計算違いがある。これは後記(二)(3)に記載のとおりの誤算に基づくものである。

番号

科目

(ロ)更正額円

(ハ)増減差額((ロ)-(イ))円

<6>

期末商品棚卸高

一八〇、四二三、六三〇

一八〇、四二三、六三五

△三五、〇〇〇、五五八

△三五、〇〇〇、五五三

<7>

八五、三一五、九三七

八五、三一五、九三二

三一、七五〇、五五八

三一、七五〇、五五三

<8>

売上総利益

八一、五六七、六八七

八一、五六七、六九二

三三、六〇〇、五四二

三三、六〇〇、五四七

<28>

営業利益

六〇、五九二、八五〇

六〇、五九二、八五五

三三、五四六、〇〇一

三三、五四六、〇〇六

<36>

経常利益

五四、一一三、七〇五

五四、一一三、七一〇

三三、五四六、〇〇一

三三、五四六、〇〇六

<38>

所得金額

五四、一七〇、五八三

五四、一七〇、五八八

三三、五四六、〇〇一

三三、五四六、〇〇六

その結果、四八年五月期における更正処分には課税標準を五円過大に認定した過誤が生じている。しかしながら、国税通則法一一八条一項による税額計算にあたつては課税標準の一〇〇〇円未満の端数を切り捨てることから、右五円の相違は更正処分の税額には影響を及ぼさないものである。

(二) 前項において被告が否認した項目の理由は次のとおりである。

(1) <1>土地売上高過少六五三五万一一〇〇円について(所得加算)

原告は、別表二の長崎県西彼杵郡琴海町大字尾戸郷字下松尾一五四八番地原富宅二名義他五六筆の土地四万二一六二坪(以下「別表二の土地」という。)の売上額六五三五万一一〇〇円につき計上もれがあつたので、売上高に加算したものである。

すなわち、原告は、昭和四八年二月二〇日葵物産株式会社(以下「葵物産」という。)との間で、前記土地を含む琴海町大字尾戸郷の土地一四万八七六五坪について全部で代金二億三〇五八万五七五〇円の売買契約を締結した。棚卸資産の販売による収益の額は、その引渡しがあつた日(法人税法基本通達二―一―一)又は法人が引渡までの日で特に定めた一日(同二―一―三)の属する事業年度の益金の額に算入すべきである。これは、課税が売買による利益の発生に先行する不合理と課税の公平との調和をはかるため、権利確定の基準の設定をするにあたり、公正妥当な会計慣行を前提とした企業の自主的行為による確定方法をとり入れたものである。右通達にいう引渡しとは、必ずしも占有の移転をいうのではなく、実質的な引渡し、すなわちその資産に対する支配関係の変化のあつたときであると考えられる。売買契約が締結され、権利証、印鑑証明書等所有権移転登記申請に必要な書類一切を交付し、物件を引渡し、代金の支払いを受け、所有権移転登記を了したか等によつて判定するのであり、所有権移転時期に関する特約は所得の帰属年度を左右しえないものである。これを本件についてみれば、原告は、昭和四八年二月一二日から同年七月一〇日までの間に土地代金として大半の一億五七〇〇万円を受け取つており、別表二の土地については同年四月一六日に葵物産へ所有権移転登記がなされていて、この部分については引渡しが行われたとみるのを相当とするので、地積に対して右契約による一坪あたり一五五〇円の計算で売上高を算定したものである。

(2) <5>当期商品仕入高過大三二五万円について(所得加算)

原告は、昭和三八年六月二八日、原告会社代表者である村里忠から取得した長崎市大浦元町三五八番地一外七筆の土地(以下「大浦の土地」という。)の価額三三八万五七〇七円を、当事業年度末にいたつて時価、値上がり費用等を考慮して三二五万円加算し、総額を六六三万五七〇七円に修正しているが、原告の取得時の価額は、原告が磯永武友に対し昭和四七年一一月七日大浦の土地の一部を譲渡したときの価額から前記購入当時の時価に換算してもほぼ適正相当であり、また、代金の支払い、引渡し、移転登記手続等が完了して約一〇年後において仕入れ価額を追加計上することは異常不合理であつて、当期商品仕入高より減額すべきものである。

(3) <6>期末商品棚卸高過大三五〇〇万〇五五三円について(所得減算)

次のア及びイの合計額であり三五〇〇万〇五五八円となるべきところ、誤算により五円少なく認定している。

ア 土地売上高過少((1))に対応する売上原価三二一九万六三八九円

土地売上高過少とし六五三五万一一〇〇円を加算した別表二の土地の売上に対応する原価が、未だ売却されていないものとして期末商品棚卸高に計上されているので除外する。この原価額は、別表二買収価額欄の合計額三一八六万七五二六円と、以下の方法で算出した買収価額に付加経理して簿価をなしている登記手数料等の金額三二万八八六三円の合計である。

すなわち、原告において、別表二の土地を含めた総体の買収土地面積一五万二六二九坪について要した登記手数料等の金額は全部で一一九万〇〇八〇円であつて、坪あたり七円八〇銭の割合となるので、別表二の土地の地積四万二一六二坪を乗じて三二万八八六三円としたものである。

イ 当期商品仕入高過大((2)参照)にかかる分二八〇万四一六九円

商品仕入高過大計算として三二五万円を除外した大浦の土地については、その一部(大浦元町三五八番地の九)を期中の昭和四七年一一月七日磯永武友に売渡し、残部については期末商品棚卸高に計上しているが、前記(2)と同じ理由から原告計算に異動を生じ次のように二八〇万四一六九円が過大となる。

項目

面積平方メートル

原告計算額 円

被告計算額 円

差引否認額 円

大浦元町土地

一〇三二・三六

六、六三五、七〇七

三、三八五、七〇七

三、二五〇、〇〇〇

うち磯永武友に売却部分(面積割按分)

一五四・四四

九五二、二三九

五〇六、四〇八

四四五、八三一

差引残部期末商品棚卸高

八七七・九二

五、六八三、四六八

二、八七九、二九九

二、八〇四、一六九

(注) 被告計算欄三三八万五七〇七円については、前述(2)のとおり三二五万円を加算する前の土地簿価である。

(4) <26>公租公課過少五万四五四一円について(所得減算)大浦の土地は、前記(2)のように村里より原告が取得して所有権を有するものであるから、村里が負担している固定資産税を原告の事業経費として追加する。

(三) 過少申告加算税額六五万三一〇〇円については、国税通則法六五条一項により賦課決定したものである。

2  四九年五月期分処分の経緯について

(一) 原告の同期の法人税確定申告、更正処分(異議決定・裁決は同額)の内訳は次表のとおりである(△はマイナスを意味する。)。

しかして所得の計算においては欠損金額の増加となり、減額となつたものである。

(1) 所得(欠損)金額の計算

番号

科目

(イ)申告額円

(ロ)更正額円

(ハ)増減差額((ロ)-(イ))円

備考

売上高

<1>

土地売上高

五五、七〇〇、〇〇〇

五六、二一四、六〇〇

五一四、六〇〇

所得加算

<2>

受取手数料

三、〇二一、七五〇

同上

<3>

五八、七二一、七五〇

五九、二三六、三五〇

五一四、六〇〇

売上原価

<4>

期首商品棚卸高

二一五、四二四、一八八

一八〇、四二三、六三五

△三五、〇〇〇、五五三

<5>

当期商品仕入高

一〇、一七七、五六〇

同上

<6>

期末商品棚卸高

一九〇、六〇一、七四八

一五五、三四九、五〇八

△三五、二五二、二四〇

所得減算

<7>

三五、〇〇〇、〇〇〇

三五、二五一、六八七

二五一、六八七

<4>+<5>-<6>

<8>

売上総利益

二三、七二一、七五〇

二三、九八四、六六三

二六二、九一三

<3>-<7>

販売費及一般管理費

<9>

役員報酬

六、八四〇、〇〇〇

同上

<10>

給料・手当

五七一、七九〇

同上

<11>

福利厚生費

六〇、二〇〇

同上

<12>

交際接待費

一、一四九、九二八

同上

<13>

旅費交通費

三四七、八九四

同上

<14>

消耗品費

九二、五六〇

同上

<15>

事業用品費

三、五九五

同上

<16>

保険料

一、四三二、九五〇

同上

<17>

修繕費

三一、七一〇

同上

<18>

通信費

四五六、九五六

同上

<19>

水道光熱費

一〇四、八四三

同上

<20>

広告宣伝費

六三三、八〇〇

同上

<21>

燃料費

一六四、三四六

同上

<22>

諸会費

二一五、〇五〇

同上

<23>

印刷費

一二八、三四〇

同上

<24>

雑費

一、三三八、六〇八

同上

<25>

地代家賃

三、五四五、〇〇〇

同上

<26>

公租公課

二、四五一、七七五

六、五〇六、九三一

四、〇五五、一五六

所得減算

<27>

減価償却費

八、二〇八、五八五

五、四九六、七〇三

△二、七一一、八八二

所得加算

<28>

二七、七七七、九三〇

二九、一二一、二〇四

一、三四三、二七四

<29>

営業利益

△四、〇五六、一八〇

△五、一三六、五四一

△一、〇八〇、三六一

<8>-<28>

営業外収益

<30>

代理店手数料

一一四、五二四

同上

<31>

雑収入

一、三八六、七〇八

同上

<32>

受取利息

四五三、〇四二

同上

<33>

受取家賃

三、〇〇〇、〇〇〇

同上

<34>

四、九五四、二七四

同上

営業外費用

<35>

支払利息

五、二八一、三一六

同上

<36>

五、二八一、三一六

同上

<37>

所得(欠損)金額

△四、三八三、二二二

△五、四六三、五八三

△一、〇八〇、三六一

<29>+<34>-<36>

(2) 税額の計算

番号

科目

(イ)申告額円

(ロ)更正額円

(ハ)増減差額((ロ)-(イ))円

備考

<1>

欠損金額

△四、三八三、二二二

△五、四六三、五八三

△一、〇八〇、三六一

<2>

所得金額

<3>

同右に対する法人税額

(土地譲渡利益金)

<4>

課税土地譲渡利益金額

五五〇、〇〇〇

八一〇、〇〇〇

二六〇、〇〇〇

<5>

同右に対する税額

一一〇、〇〇〇

一六二、〇〇〇

五二、〇〇〇

<6>

控除所得税額等

五九、二〇八

五九、二〇八

<7>

差引法人税額

五〇、七〇〇

一〇二、七〇〇

五二、〇〇〇

(二) 前項において被告が否認した所得計算項目についての理由は以下のとおりである。

(1) <1>土地売上高過少五一万四六〇〇円について(所得加算)

原告は、別表三の長崎県西彼杵郡琴海町大字尾戸郷上松尾一六〇三―二外一筆の土地(以下「別表三の土地」という。)の売上高五一万四六〇〇円を計上もれしているが、これは前記1(二)(1)において述べたのと同様の事実から引渡しも済んでいると認められるものであり、売上高に加算したものである。

(2) <6>期末商品棚卸高過大二五万一六八七円について(所得減算)

土地売上高過少として加算した(1)の土地の売上に対する原価二五万一六八七円が未だ売却されていないものとして期末商品棚卸高に計上されているので除外したものである。

これは、買収価額二四万九〇九八円と登記手数料等の金額二五八九円の合計であるが、これらはそれぞれ次のとおり算出したものである。すなわち、買収価額二四万九〇九八円については、林田壽二からの土地買収契約額九六万六九〇〇円に、その契約にかかる地積四二六二平方メートル中の当四九年五月期中における売却分(葵物産に対する所有権移転登記済相当分)地積一〇九八平方メートルの割合を乗じて算出したものである。次に登記手数料等の金額二五八九円については、この当期売却分を含む原告の総体の買収土地面積一五万二六二九坪について要した登記手数料等が一一九万〇〇八〇円であるところから、坪あたり七円八〇銭の割合と計算されるので、四九年五月期中における売却分地積三三二坪を乗じて二五八九円と算出したものである。

(3) <26>公租公課過少四〇五万五一五六円について(所得減算)

次のア及びイの合計額である。

ア 固定資産税過少二万九六三六円

前記1(二)(4)で述べたように大浦の土地は原告の所有であるから、その固定資産税を原告の事業経費として追加する。

イ 事業税過少四〇二万五五二〇円

四八年五月期につき申告所得金額二〇六二万四五八二円に対して所得金額を五四一七万〇五八八円とする増額の更正処分を行つたが、その差額三三五四万六〇〇〇円に対し一二パーセントの割合の事業税が追加課税されるところから算出される四〇二万五五二〇円を事業経費として追加する。

(4) <27>減価償却費過大二七一万一八八二円について(所得加算)

次のア及びイの合計額である。

ア 美術品等減価償却一五九万九二二〇円

次表中<1>の美術品類は時の経過によりその価値が減少するものでないから減価償却資産となるものではなく、<2>は実在しない架空の資産であり、<3>のイタリア製大理石テーブルは、昭和四八年五月三一日、原告がその代表者村里より取得したことになつているが、村里個人が居住する住宅の食堂に置かれ食卓として使用されており、専ら村里の日常生活の用に供されているものであつて、実体は原告の資産と認めることはできず、原告の事業経費の対象となるものではない。

原告自身も事後の昭和五一年六月一日から昭和五二年五月三一日までの事業年度(以下「五二年五月期」という。)の決算において、この償却金額一五九万九二二〇円を償却できないものを誤つたとし、すべてについて雑収入として利益に組み入れ是正しているものである。

項目

品名

取得価額円

四九・五期償却費計上額 円

<1>美術品等

高花瓶

九六、〇〇〇

二四、〇〇〇

額入傘鉾絵

五〇、〇〇〇

一二、五〇〇

蛇紋岩(実際はくじやく石)

三、五〇〇、〇〇〇

四九七、〇〇〇

イタリー銅板壁掛馬

三四〇、〇〇〇

八五、〇〇〇

ドレスデン飾りつぼ

九五〇、〇〇〇

二三七、五〇〇

真珠額

五〇〇、〇〇〇

一二五、〇〇〇

絵あじさい

四〇〇、〇〇〇

一〇〇、〇〇〇

古美術(中国茶つぼ)

九五〇、〇〇〇

一一八、七五〇

仏像置物(西望作)

七〇、〇〇〇

四、九七〇

美術品(花瓶二)

四〇〇、〇〇〇

五〇、〇〇〇

油絵

三〇〇、〇〇〇

一八、七五〇

<2>実在しないもの

油絵

一五〇、〇〇〇

六、二五〇

<3>個人資産と認定

イタリー製大理石テーブル

二、二五〇、〇〇〇

三一九、五〇〇

一、五九九、二二〇

イ 庭園減価償却一一一万二六六二円

原告は、社宅として代表者村里忠の居住する住宅を村里所有の土地の上に約一七〇〇万円で建築し、これに伴い当期中の昭和四八年六月に、庭石、植木、泉水、鯉等二〇二八万九〇五八円にも及ぶ庭園を築造しその償却費を事業の経費として損金経理をしている。

しかし、本来償却の対象となる庭園は、料亭、旅館、ホテル等の飲食店業、旅館業における庭園で通常その建物と一体となつて事業のための基本施設を構成するようなものを言うのであつて、将来その建物を改築する場合には庭園もその運命を共にするような想定のもとに耐用年数も定めているとされているものであつて、本件の如きものは償却の対象となるものでなくまた事業用のものとも認められない。

原告自身もその後の五二年五月期の決算において、この償却金額一一一万二六六二円を償却できないものを誤つたとし、雑収入として利益に組み入れ是正しているものである。

(三) 法人の土地譲渡所得に対する税額の特別加算((一)(2)税額の計算表参照)

(1) 原告は欠損金額を四三八万三二二二円とする申告を行い、被告はこれに対し右金額を五四六万三五八三円とする更正処分を行つたものであるが、所得金額はいずれも無とするものであつて、変更はないものである。また欠損金額についてはこれを増加しているもので原告に不利益を与えるものではない。

ただ、所得に対する法人税の額については、本件は土地の譲渡等があり、租税特別措置法六三条の特別税率の適用がある場合に該当するところ、同条一項によれば、所得に対する法人税の額は、法人税法六六条の規定により所得の金額に同条に定める税率を乗じて算出した法人税の額に、土地譲渡利益金額に百分の二〇の割合を乗じて計算した金額を加算した金額であると定めている。

これによると、当期の所得金額は無であるから法人税法六六条による法人税額は零円となり、土地譲渡利益金額から算出される金額のみが所得に対する法人税の額ということになる((一)(2)表の<3>及び<5>)。

(2) <4>土地譲渡利益金額二六万円の加算ついて

原告は、特別税率の適用がある土地譲渡利益金額として、諫早市貝津町一二八八―一の土地について五五万円の申告をなしているが、更に左のとおり別表三の土地の譲渡にかかる分二六万円(一〇〇〇円未満切捨)を加算したものである。

番号

項目

金額等

備考

<1>

譲渡資産の明細

<2>

土地の譲渡等の内容

措置法六三条一項一号

<3>

資産の取得年月日

昭和四九年一月四日

<4>

所在地

琴海町尾戸郷上松尾

<5>

面積

一、〇九八平方メートル

<6>

譲渡の年月日

昭和四九年一月四日

<7>

土地の譲渡による収益の額

五一四、六〇〇円

(二)(1)参照

<8>

同右に対応する原価の額

二五一、六八七

(二)(1)参照

<9>

経費の額の計算

<10>

法定の負債利子

一、二五八

<8>×1/12月×六%

<11>

法定の一般管理費

八三八

<8>×1/12月×四%

<12>

経費の額

二、〇九六

<10>+<11>

<13>

土地譲渡利益金額

二六〇、〇〇〇

<7>-<8>-<12>

<14>

土地譲渡税額

五二、〇〇〇

(注) <10>及び<11>については、租税特別措置法施行令三八条の四、六項の規定によりいわゆる概算法の方法によつて<8>原価の額に一二か月中の保有期間の月数(一か月)の割合を乗じ、更に六パーセント及び四パーセントを乗じて算出したものである。

四  被告の主張に対する認否

原告の四八年五月期の法人税確定申告及び更正処分の内訳が被告主張のとおりであること、右のうち被告が否認した項目についての否認理由が被告主張のとおりであることは認める。

五  被告の主張に対する原告の反論

1  別表二及び同三の各土地による所得は発生していない。

(一) 右土地はいずれも四八年五月期、四九年五月期に引渡しがなされていなかつたので、販売による収益は生じていない。すなわち、

(1) 原告は葵物産に対し、昭和四八年二月二〇日、

ア 長崎県西彼杵郡琴海町尾戸郷字上松尾一五九二番山林四八七三平方メートル外九九筆の土地を代金一億〇〇三三万六一五〇円で売り渡し(<証拠略>による契約―以下二号契約という。)、手附金として二〇〇〇万円、中間金として六一六万一六〇〇円を受領し、

イ 前同町同郷字下松尾一五四八番山林三五七平方メートル外九四筆の土地を代金一億三〇二四万九六〇〇円で売り渡し(<証拠略>による契約―以下一号契約という。)、手附金として二六〇〇万円、中間金として七四八三万八四〇〇円を受領した。

右売買代金の合計は二億三〇五八万五七五〇円であり、原告が受領した金員の合計は一億二七〇〇万円である。

(2) 右各売買契約にはそれぞれ左の特約があつた。

ア 葵物産は昭和四八年四月三〇日までに残代金を支払い、原告はこれと引換えに所有権移転登記手続をなす。

イ 所有権の移転時期は代金全額完済のときとする。

(3) 原告は、残代金一億〇三五八万五七五〇円の受領と引換えに所有権の移転登記をなすべく、司法書士に登記手続の準備を依頼していたところ、同司法書士の錯誤により、残代金未受領のうちに前記各土地について所有権移転登記がなされてしまつたものであり、この登記は前記(2)の特約に違反した登記であつて法人税基本通達二―一―一にいう引渡にはあたらない。

また、引渡とは、売買契約により売り渡す物件が複数であつて、その全部を一括して引渡す約定であるときは、全体の引渡が完了したときはじめて引渡があつたと言うべく、その一部が売主の真意によらないで移転したにすぎないときは、前記通達にいう引渡は完了していないものというべきである。

(二) 解除

原告は、葵物産が残代金一億〇三五八万五七五〇円を支払わなかつたので、昭和五五年七月八日、葵物産に対し、右残代金を同月三一日に支払うよう催告するとともに右支払いなきときは契約を解除する旨の通知をなし、右通知はそのころ葵物産に到達したが、支払いがなかつたので右売買契約は右同日をもつて解除された。

以上により、別表二及び同三の各土地の売買或いは引渡を前提にした所得は発生していないのであるから、これを存在するものとした本件更正処分は違法である。

2  原告が大浦の土地の価額に三二五万円を加算したのは、時価、値上がり費用等を考慮したものであり相当であるところ、この金額をもとに、磯永武友に売り渡した土地を除いた残部の土地について面積割按分により算出した二八〇万四一六九円を期末商品棚卸高に算入するのは正当である。

六  原告の反論に対する被告の認否及び再反論

原告が、その主張の日付でそのころ葵物産に対して条件付解除通知をなしたことは認める。しかしながら、別表二及び同三の各土地については、以下詳述するとおり解除の効果は及んでいないし、及んでいるとしても本件処分とは関連がないので、被告はこれを選択的に主張するものである。

1  前掲一号契約と二号契約を一体のものととらえても、葵物産に代金合計二億三〇五八万五七五〇円のうち一部未払分があるからといつて、そのことのみで葵物産に履行遅滞があつたとはいえない。葵物産は原告に対して代金支払と所有権移転登記手続との同時履行の抗弁権を有していたのであり、従前原告が契約にかかる土地全部について履行の提供をしていたとは認められないからである。

してみると、本件条件付解除の通知をなすに際しては原告も所有権移転登記手続をなす債務の提供をしなければならないのであるが、既に葵物産に所有権移転登記が経由された別表二及び同三の各土地を除くその余の一三六筆の土地について、原告が直ちに所有権移転登記手続をなしうる準備をしたとは考えがたく、結局本件条件付解除の通知は有効になされなかつたといわざるをえない。

2  次に、本件条件付解除通知が有効になされたとしても、前記売買契約のすべてが解除されたとみるべきではない。

売買契約が締結された時点において、残代金額は一号契約(別表二の土地のうち番号1ないし53の土地が含まれる)については二九四一万一二〇〇円、二号契約(別表二の土地のうち番号54ないし57の土地及び別表三の土地が含まれる。)については七四一七万四三五〇円であつたが、その後葵物産は原告に三〇〇〇万円を追加内金として支払つた。この金員の充当方法につき当事者間に明確な合意がなかつたとしても、一号契約の方が履行期が先に到来しかつ残代金が右追加内金額より僅少であつたこと、及び契約は誠実、合理的に履行されるべきであることを考慮すると、右内金は一号契約関係の残代金に充当されたと認めるのが合理的である。したがつて、一号契約については葵物産の履行はすでに完了しているのであるから、解除の効果は及ばない。

仮にそうでないとしても、少なくとも別表二及び同三の各土地については解除の効果は及ばないというべきである。契約の一部に履行遅滞がある場合、その不履行により契約全部の解除が認められるのは、給付の内容が不可分である場合等一部の履行遅滞によつて契約をなした目的が達せられない場合に限られる。しかるに本件の場合、原告が葵物産に対して有するのは代金支払請求権であり一部ずつの履行を漸次受けてもその目的を達するものであること、及び、葵物産は既登記の土地につき、既に北九州朝鮮人商工協同組合に所有権移転登記を済ませており、民法五四五条一項但書によつて原告が右土地の現物返還を受けることは不能に帰していることの各点から、前記土地には解除の効果は及ばないと解するのが相当である。

3  また、前記契約が全部解除されたとしても、別表二及び同三の各土地についてはそれぞれ四八年五月期及び四九年五月期の各事業年度において引渡がなされ、その販売収益はそれぞれの事業年度において発生し実現しているのであるから、解除に基づく販売収益の減少は、現実に売買代金の返還がなされた事業年度の損金として処理することとなり、既往に遡つて課税所得の再計算を行うものではないのである(法人税基本通達二―二―一六参照)。

第三証拠<略>

理由

一  請求原因1及び2の事実並びに四八年五月期の法人税確定申告及び更正処分の各内訳が被告主張のとおりであることは当事者間に争いがなく、四九年五月期の法人税確定申告及び更正処分の各内訳が被告主張のとおりであることについては、原告は明らかにこれを争わないので自白したものとみなす。

二  原告は本件各処分が事実認定及び法律の適用を誤つた違法な処分である旨主張するので、まず被告主張の土地売上高の点につき判断する。

1  <証拠略>を総合すれば、次の事実を認めることができる。

(一)  原告は、昭和四八年一月ころ、葵物産の依頼を受けてレジヤー産業経営のための用地として長崎県西彼杵郡琴海町大字尾戸郷付近の土地買収を行い、同年二月二〇日ころ、葵物産に対し、右同所字上松尾一五九二番山林四八七三平方メートル外九九筆の土地合計二一万三九九五平方メートルを代金一億〇〇三三万六一五〇円で(前記二号契約)、同所字下松尾一五四八番山林三五七平方メートル外九四筆の土地合計二七万七七九二平方メートルを代金一億三〇二四万九六〇〇円で(前記一号契約)、それぞれ売渡す旨の契約をした(総合計面積四九万一七八七平方メートル=一四万八七六五坪、総代金額二億三〇五八万五七五〇円、一坪当り一五五〇円となる。)。

契約書を右のように二つに分けたのは葵物産に対して所有権移転登記が即時可能か否かによるもので、既に原告名義に所有権移転登記ずみの分を一号契約とし、相続関係その他で所有権移転登記に若干の日数を要する見込みの分を二号契約としたものである。

そして右契約日ころから五月三一日までに一億三七〇〇万円、その後同年七月一〇日頃までに二〇〇〇万円、合計一億五七〇〇万円が右土地代金の一部として葵物産から原告に対して支払われた。

(二)  右契約後原告より葵物産への所有権移転登記手続についての話し合いがもたれ、その結果、同年四月一二、三日ころ、原告の事務所において原告代表者村里忠及び葵物産常務新井文隆より司法書士長郷四万男に対して別表二の土地について所有権移転登記手続の依頼がなされ、同時に権利証、委任状、印鑑証明書、売渡証書等、長郷が自ら調達作成できるものを除き登記手続に必要な書類のすべてが交付されたので、長郷に同月一六日右土地について葵物産への所有権移転登記手続を了した。なお、右売買契約書には移転登記手続と残代金の支払いが同時である旨の記載があるが、右登記手続依頼に際して村里から長郷に対して残代金の支払いを待つて登記申請手続をなすよう指示したことはなかつた。

(三)  村里は昭和二九年頃から不動産業を始めてきたもので、昭和四〇年ころ、現在の宅地建物業協会の前身である不動産業長崎支部の副支部長をしていたころ当時同支部の事務の手伝いをしていた長郷と知り合うようになり、同人が昭和四四年四月より司法書士としての業務を開始したことから、以後同人に登記申請手続を依頼するようになつたものであるが、前記(二)項の登記手続以後もひきつづき昭和五一年一二月ころまで村里は長郷に対して、原告名義又は村里個人名義で登記手続を依頼している。

(四)  長崎税務署職員山田勲は、昭和五〇年一一月から原告の納税申告に関し法人税の調査に着手したが、村里は、その当初の段階では、別表二の土地の所有権移転登記は司法書士の間違いである旨述べたことはなく、翌五一年三、四月の調査終了間際になつて初めて右主張をするに至つた。

以上の事実が認められ、<証拠略>中右認定に反する部分は措信しがたく、その他右認定を左右するに足りる証拠はない。

原告は、残代金一億〇三五八万五七五〇円の受領と引換えに所有権移転登記をなす特約があつたもので、別表二の土地の所有権移転登記は司法書士の過誤によりなされた原告の意思に基づかない登記である旨主張するが、前記(一)・(二)認定のとおり契約書を二つに分けていながら右両契約書の各一部を選択して登記申請手続をしていること、及び前記(三)・(四)認定の各事実を考えあわせると、右登記は原告の意思に基づくものと推認することができる。

2  <証拠略>を総合すると、別表三の二筆の土地は、前記二号契約に含まれ、原告名義に未だ登記は移つていなかつたが、登記手続費用を考慮して直接葵物産へ所有権移転登記をなすこととし、原告の従業員溝口誠治及ぶ葵物産からの出向社員高橋某らにより昭和四九年一月四日右二筆の土地につき葵物産名義の所有権移転登記がなされたこと、原告は、右土地の旧所有者林田壽二から三筆の土地を購入したにも拘らず、その内から二筆についてのみ前記手続をなしていることがそれぞれ認められ、<証拠略>中右認定に反する部分は措信できず、その他右認定に反する証拠はない。

原告は、右登記手続も別表二の土地と同様原告の意思に基づかないものである旨主張するが、右認定事実と前記1の(一)で認定した事実をあわせ考察すると、仮に別表二の土地の登記が錯誤に基づくものであるとすれば、右の二筆の土地の手続をより慎重にすると考えられるのに特にそうした配慮をした様子がないこと、また右土地についてのみ、特に残代金と引換えに登記手続をなすべき事情も認められないことなどからみれば、所有権移転登記手続も原告の意思に基づくものであると推認しうる。

3  ところで、法人税基本通達二―一―一では引渡時をもつて収益の帰属時期としている。右引渡しとは、現実の占有の移転のみならず、実質的にその資産に対する支配関係の変動があつた場合をも含むと解するのが当事者間の利害に合致すると考えられ、登記関係書類の交付、代金の支払い、所有権移転登記手続の完了等をもつてその指標とするのが妥当である。これを本件についてみれば、前記認定のとおり本件土地の売買代金は一坪当り一五五〇円であるから、別表二の土地の代金額は計六五三五万一一〇〇円、同三の土地については計五一万四六〇〇円と算出することができるところ、葵物産は前記認定のとおり昭和四八年五月三一日までに一億三七〇〇万円、その後同年七月一〇日頃までに更に二〇〇〇万円を既に支払つているうえ、前記のとおり葵物産名義の所有権移転登記もなされていることをも考慮すると、右各土地についてはそれぞれ四八年五月期、四九年五月期において引渡しがなされたものと解することができ、この理は、可分であれば一個の契約の一部であつても同様である。

4  ところで原告は別表二及び同三の各土地の売買契約は昭和五五年七月三一日の経過をもつて解除されたから原告に収益は発生していない旨主張する。原告がその主張のとおりの解除通知をなしたことは当事者間に争いがない。

右解除が有効になされたか、仮に有効としてその効果が別表二及び同三の各土地に及んでいるかについては被告主張のとおり争いのあるところである。

しかしながら、仮に前記契約が全部解除されたとしても、別表二及び同三の各土地についてはそれぞれ四八年五月期及び四九年五月期の各事業年度において前記認定のとおり引渡がなされ、その販売収益はそれぞれの事業年度において発生し実現しているのであるから、解除に基づく販売収益の減少は現実に売買代金の返還がなされた事業年度の損金として処理すれば足り、四八年五月期及び四九年五月期に収益が生じた事実を既往に遡つて訂正までする必要性は存しないものといわざるをえない。

よつて、解除の主張はその適否及びその効力範囲の如何を問わず本件処分とは関連がないものである。

5  以上によれば、四八年五月期及び四九年五月期の土地売上高は被告主張どおりの金額(昭和四八年五月期は一億五九一二万三三〇〇円、昭和四九年五月期は五六二一万四六〇〇円)であるといわねばならない。

6  そうすると、別表二及び同三の各土地については既に売卸されたものであるから、その原価として各買収価額及びこれに付加経理して簿価をなしている登記手数料等の金額の合計額を、四八年五月期及び四九年五月期の各期末商品棚卸高より減算しなければならないこととなる。

<証拠略>によれば、別表二の1番から53番までの土地の各買収価額が同表記載のとおりであること、同表の54番、55番の各土地については、もと所有者滝口與八からの総買収地積が二万一六八六平方メートルで総買収価額が四九二万円であるから、その地積合計三二七平方メートルの買収価額は七万三五〇〇円であること、同表の56番、57番の各土地については、もと所有者松崎ササからの総買収地積が一万九八五〇平方メートルで総買収価額が四五〇万三四〇〇円であるから、その地積合計一九五一平方メートルの買収価額は四四万二六二六円であること、以上により別表二の土地の総買収価額は三一八六万七五二六円、総買収地積は一三万九三八〇平方メートル(四万二一六二坪)となること、別表三の土地については、同様にもと所有者林田壽二からの総買収地積が四二六二平方メートルで総買収価額が九六万六九〇〇円であるから、その地積合計一〇九八平方メートル(三三二坪)の買収価額は二四万九〇九八円であること、原告の総買収地積は一号契約、二号契約の各物件に五筆を加えて一五万二六二九坪(五〇四・五六平方メートル)であり、その総登記手数料等は一一九万〇〇八〇円であること、別表二の土地の面積が総買収地積に占める割合を右総登記手数料等額に乗じて算出するとその登記手数料は三二万八八六三円となること、別表三の土地についても同様にして計算すると登記手数料は二五八九円となることが認められる。これによると、四八年五月期の棚卸商品高においては別表二の土地の買収価額と右三二万八八六三円との和三二一九万六三八九円が、四九年五月期の棚卸商品高においては別表三の土地の買収価額と右二五八九円との和二五万一六八七円が、それぞれ減額されるのが相当である。

三  次に昭和四八年五月期の当期商品仕入高について検討する。

原告が昭和三八年原告代表者村里忠から長崎市大浦元町三五八番地一外七筆の土地を譲り受けたことについて原告は明らかに争わないのでこれを自白したものと認むべきところ、右事実に加うるに<証拠略>によると、原告は原告代表者より、右土地(一〇三二・三六平方メートル)を三三八万五七〇七円で譲り受けたこと、右土地の当初価格は土地代と造成費を合算したものであり、一平方メートルあたり三二七九円となること、原告は磯永武友に対し昭和四七年一一月七日右土地のうち一五四・四四平方メートルを一八〇万円で売り渡したこと、原告は四八年五月期に大浦の土地の仕入価格を三二五万円追加計上するとともに、大浦の土地のうち磯永に売却した残余の土地(八七七・九二平方メートル)につき当期棚卸資産として五六八万三四六八円計上したことが認められる。

このうち大浦の土地の仕入価格については、磯永への販売価格が一平方メートルあたり一万一六五五円に相当するところ、買い受け後一〇年近く経過しており原告の譲渡利益も加味されることと対比するとほぼ適正妥当であつて、前記当初価格をもつて大浦の土地の仕入価格と認定するのが相当であり、時の経過による値上がり分を見越して保有価値とすべきではない。これに対し、買い受け後一〇年程経過してから価格を操作するのでは、長期にわたり仕入価格が固定することがなくまた固定する時期も不安定であつて著しく不合理である。よつて四八年五月期に大浦の土地につき原告が仕入価格として追加計上した三二五万円は当期商品仕入高より減額すべきであり、結局、昭和四八年五月期の当期商品仕入高は被告主張どおり二億〇〇八四万二四三七円であるといわねばならない。

また、同様にして、残余の土地についても右認定にかかる当初取得価格を面積割合で按分した二八七万九二九九円を仕入高即棚卸高とすべきであり、原告計上額との差二八〇万四一六九円が所得過大として減算されることになる。

加えて、大浦の土地は原告所有なのであるから、原告代表者が負担していた固定資産税は原告の事業経費として所得より減算すべきであり、四八年五月期においては五万四五四一円、四九年五月期においては二万九六三六円をそれぞれ減算すべきことになる。

四  昭和四九年五月期の減価償却費過大として所得加算された二七一万一八八二円については、美術品等減価償却費一五九万九二二〇円及び庭園減価償却費一一一万二六六二円ともども、原告は五二年五月期の決算において、償却できないものを誤つたとして雑収入として利益に算入していることが弁論の全趣旨から認められ、右事実に照らしても、被告が右二七一万一八八二円を減価償却費から削除したことは相当といわなければならない。

五  四九年五月期の法人税額について

本件は土地の譲渡があつて租税特別措置法六三条の特別税率の適用がある場合に該当するので、当期の法人税額は法人税法六六条一項によつて算出した法人税額と土地譲渡利益金額の百分の二〇との和であるところ、当期の所得全額は更正決定の先後を通じ零であるので専ら土地譲渡利益を基に算出した金額が税額となるのであるが、これは原告が申告した諫早市貝津町一二八八―一の土地における五五万円と、被告の更正決定により譲渡利益の生ずることとされた別表三の土地にかかる二六万円(一〇〇〇円未満切捨)との和によるものとなる。

六  ところで、前述したところによると、四八年五月期の更生処分に際して、被告は期末商品棚卸高の算定にあたり、別表二の土地についての買収価格と登記手数料等の合算額三二一九万六三八九円及び大浦の土地の残部についての仕入価格減額分二八〇万四一六九円の合計は三五〇〇万〇五五八円となるべきところ、これよりも五円少なく算出して期末商品棚卸高を減算したことにより、五円過大に所得高(課税標準)を認定するに至つたことが認められる。

しかしながら、国税通則法一一八条一項により税額計算をするにあたつては課税標準の一〇〇〇円未満の端数は切り捨てることから、右五円の相違は更正処分の税額には影響を及ぼさないものということができる。

七  四八年五月期の過少申告加算税額六五万三一〇〇円については、国税通則法六五条一項により、別表一の納付すべき税額(三)と同(二)との差に百分の五の割合を乗じて算出した額であつて、前記二の経過からいつて原告が過少申告したことにより賦課決定されてもやむをえないところのものである。

八  以上の次第で被告の本件処分には何ら違法な点はないから、原告の本訴請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 渕上勤 米田絹代 関洋子)

目録(一)

一 原告の昭和四七年六月一日から昭和四八年五月三一日までの事業年度における所得金額を金二〇六二万四五八二円から金五四一七万〇五八八円、納付すべき税額を金七七六万〇四〇〇円から金二〇八二万二九〇〇円と更正した処分。

二 右過少申告に伴い、右事業年度につき金六五万三一〇〇円の過少申告加算税賦課決定処分。

目録(二)

原告の昭和四八年六月一日から昭和四九年五月三一日までの事業年度における欠損金額を金四三八万三二二二円から金五四六万三五八三円、課税土地譲渡利益金額を金五五万円から金八一万円、納付すべき税額を金五万〇七〇〇円から金一〇万二七〇〇円と更正した処分。

別表一ないし三<略>

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